ハザマ現場レポート

旧ハザマ本社ビル解体工事

Interview&Writing:藤田峰子

データのない解体工事に各担当の知恵を結集
新たな出発にふさわしい実績をつくる

前例の少ない高層S造解体

 2月中旬、旧ハザマビルの解体が終わった。1972年(昭和47)竣工、地上19階、高さ約72m、延床面積約2万8,000m2、地上部はS造。工期は低層棟も含めて9か月という短期間だったが、それを半月縮めて工事を終了している。更地となった「北青山2−5−8」で、工事を担当した吉原所長に話を聞いた。
 「通常は重機を載せ、上から解体するか、横からの解体になるわけですが、上からでは、S造なので重い重機では荷重に耐えられない。また横からにしても高層ビルに対応する重機がなかなか無く、安全面からも鉄骨を切るのが人的作業となり難しいということで、ブロック解体工法を採ることにしました」
 音・振動・粉塵、加えて匂いなどを最低限に抑えるのは言わずもがなの、東京の一等地での解体だ。それらを考慮し、通常の工法が採れないため発想されたのが、「つくる」の逆をする、つまりスラブ→柱という順で分解し、クレーンで吊り下ろして解体するやり方だった。
「日本ではほとんど前例がない工法でした。参考にするデータがなく、検証はすべて机上でしか行えなかったため、あらゆる場合を想定して現場でやってみるということの繰り返しでした」
  ハザマビルから出された最後の宿題、だったのかもしれない。

写真
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解体中の仮囲い
解体状況

 

システム化されたブロック解体

作業フロー図
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 ブロック解体は1フロアを碁盤の目のようにカッターで切り、梁付きスラブ、柱・梁付きスラブの順につり下ろしていく。吊り下ろす部材の種類は20〜30、総数60ピースにも上った。さまざまな形のピースをいかに水平を保って安全に吊り下ろすか。すべての重心の解析が行われ、一つのパターンに過剰とも言えるくらいの数種の安全対策が考えられ検証された。
 「常に最悪の場合を想定して二重、三重の安全対策をかけていましたが、1ピース目の時はまっすぐ上がるのか、さすがに緊張しました。結果として部材が斜めになったりしたことは一度もありませんでした。工程のサイクルも最初は1フロア8日だったものが、少しずつ短縮できるようになり、13階から下は3.5日となりました」
 また、従来工法では内装解体が終わるのを待って、重機を入れての躯体解体となるが、ブロック解体ではすべての工程を並行して行えるというメリットがある(図参照・図の下からの工程が解体の順序となる)。これが短工期をさらに短縮できた要因となった。そして同時にS造につきものの、アスベスト除去にも効率化をもたらした。
 「アスベスト除去は密閉空間で行われ、この程度のビルなら従来工法であれば6か月はかかってしまいますが、これも他の作業と並行してできたので、工期短縮できました」
 アスベストが社会問題となって、工期途中で法規の改正が行われたりもしたが、行政、近隣などへの説明などの責任も十分に果たした。
  さらにブロック解体によってスラブに開口部ができることから、PCの経験者からの発想で移動式の支保工が採用された。「これも知恵の出し合いを重ねてきた結果です」。

 

図

 

梁付スラブ、ブロック解体状況
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新たな解体技術の構築がスタートに

 「新しい分野を手掛ける時は、常に検証しながら進まざるをえません。今回はここで優秀なスタッフと試行錯誤を重ねた結果、新たな解体技術が構築できたと思います」
 宿題はきちんとやり終えることができた。それにしても複雑な心境の仕事だったのでは?
 「実にしっかりつくられていて解体は大変でしたよ(笑)。解体したくないという気持ちもありましたが、他人に任せるより自分の手でやったほうがいいんだと思いながら仕事をしていました」
 これを書きながら、しきりに甦ってきた一つの光景がある。
 1階のエレベーターホール。扉が開いて、大きく美しい花束を持った男の人が降りてきた。周囲にいた人が何人か「長い間お疲れ様でした」と声をかけた。その人は静かに会釈を返しながら、社員通用口に、あの大きな柱のかげに消えていった。ただそれだけの光景だ。退職の日なのか・・・、退職の日には花束をもらうんだ・・・、そう思いながら、その人の背中を見送った。
 ハザマビルにも退職の日の花束を。長い間お疲れ様でした。だが、最後に置くのは吉原所長のこの言葉こそがふさわしいだろう。
 「解体は新しいスタートだと考えています。次は自社ビルの建設を担当させてほしいなあ(笑)」

 

工事概要

工事名称 ハザマビル解体工事
工事場所 東京都港区北青山2−5−8
企業者 三井不動産(株)
工期 2005年5月27日〜2006年3月15日
施工 ハザマ
工事概要 解体工事【高層棟】S造(地下RC造+SRC造) 地上19階 塔屋2階 地下4階 最高高さ72.15m 【低層棟】RC造 地上3階 地下2階 最高高さ14.5m