ハザマ現場レポート

ダイニン水力発電建設工事

(原稿執筆:国際事業統括支店)

ダニム水力発電建設から40年、
再びこの地に発電施設を建設

はじめに

 ベトナム南部、ホーチミン市の北東約260km、なだらかな丘陵が広がる高原地帯にダイニンダムの現場は位置している。この地に、2007年末には3億2千万トンの貯水容量の湖が出現することになる。
 べトナムは1980年代後半からの積極的な市場開放政策により継続的な経済成長を維持し、それに伴う社会資本整備が急務となっている。電力需要も前年比で年間10%を超える勢いで伸びており、安定的な電力供給を可能とするための新たな発電施設の建設が求められている。
 ダイニン水力発電所はベトナム最大の都市ホーチミンを中心とする南部地域への電力供給を目的に、国際協力銀行の資金援助のもと、ベトナム電力公社によって計画された総出力30万KWの水力発電プロジェクトである。当社はダム本体工事を単独施工している。

 

ダム本体工事の特徴

 ダム工事は、ダニム川本流とその支流のダキヨン川にそれぞれ2つのメインダムと4つの鞍部ダムを建設し、2つの貯水池を設け、約2.5kmに及ぶ大規模開水路で連結し、1つの貯水池として機能させるものである。本流には世界最大級のラジアルゲートを持つ常用洪水吐と洪水の発生に備えた非常用洪水吐を建設する。ダムの型式は中央遮水型アースロックフィルダムで、盛立量は800万m3、ダム堤頂部総延長は6km余り、総運土量は1,400万m3に及ぶ。

 

ダイナミックな施工と緻密な管理

 当地の気候は亜熱帯モンスーンに属し、土工事泣かせの雨季が半年続き、乾季になれば土煙が立ち上る状態になる。洪水期には河川が増水し、河流処理を誤るとダム建設の安全が脅かされる。この自然条件下での工程確保は、雨季の稼働率アップと乾季の急速施工がカギとなる。生産性向上のため、総延長25kmの工事用道路の整備、施工量の平準化や掘削材料直送による盛立て材利用の効率的な運土計画の展開などにより、45tダンプ、36tアーティキュレートダンプ、5m3バックホーといった大型機種をはじめとした120台以上の重機をフル稼働させ、月間50万m3の施工を達成して土工事の工程を確保してきた。
 一方、常用洪水吐(こうずいばき:洪水の流入に対する放水設備)の両翼はダニムダムとNo.3鞍部ダムに連結される構造となっており、洪水吐コンクリート(7.5万m3)の施工が盛立工程に直接影響を及ぼす。その洪水吐は重量160t のラジアルゲートを支えるための440本のプレストレステンドン(引張り材)の施工や地上高30mの橋梁施工など複雑な工種が輻輳し、工程的にも厳しいものであった。現場では詳細な施工計画の作成や綿密な工程管理に基づき、半直営体制による昼夜施工の結果、土工事へ影響を及ぼすことなくコンクリート工事を完了させた。
 ダイナミックな施工を支えるのは緻密な計画・管理とスタッフや協力会社との信頼関係である。効率的な施工計画の作成、盛立材料やコンクリート強度など不具合を発生させない品質管理、安全性を確保した作業計画などの、刻々と変化する現場条件に対応したきめの細かい施工・品質・安全管理の下に、最盛期には1300人の工事従事者と、多数の重機械を駆使してダイナミックな施工を実現した。2006年9月末に6つのダム全ての盛り立てを無事完了している。

 

完成したダキヨンダムと呑口(上流から)
完成したダキヨンダムと呑口(上流から)
ダニムダム施工状況
ダニムダム施工状況
洪水吐施工状況
掘削完了後の連結水路
左から、No.3鞍部ダム、洪水吐とダニムダム(上流側)

 

式典と大看板

 これまでに工事節目の式典を3度開催した。最初の式典は2004年11月、ダキヨン川の転流式である。新たに生まれた水の流れに、転流の祝いと安全を祈願して米、塩、酒を積んだ小船(祝船)を流した。次は2005年7月のダニム川の転流である。基礎地盤の複雑な地質のためグラウチングによる基礎処理が遅れると、他工程に影響を及ぼすため、工期を守るために厳しい状況下の洪水期前の転流。覚悟と祈りの式典であり、祝い樽として地元名産のダラットワインの樽を、たおやかな流れに投じた。その後、数度の増水に河床部が冠水する被害を受けたが、2005年12月、ダニムダムの定礎式を迎えることができた。職員、ベトナム人スタッフが『間組』の印半纏をまとい、木遣り歌と拍子木のリズムに合わせ、御輿担ぎで定礎石を運ぶ純日本スタイルで行った。職員の誰もが経験したことのない式次第であったが、国内で行われた定礎式のビデオを研究し、練習を重ねて、現場スタッフが一丸となって準備して臨んだ甲斐があり、企業者をはじめとして来賓に称賛された。またメインダムの本格的な盛立へ向かってアクセルを全開させる大切な区切りとして、式典を成功させた達成感から工事担当者の喜びはひとしおであった。

御輿による定礎石の搬入
御輿による定礎石の搬入
ダンプアップの様子

ダニム川上流には40年前に戦後賠償工事として当社が施工したドラン(旧ダニム)発電所がある。その下流40kmに、世代を超えた後輩がダイニン水力発電施設を建設している。国道からよく見える洪水吐左岸に掲げた「HAZAMA」の大看板(8mx24m)は、対外的なアピールとともに、われわれ自身を鼓舞している。40年の歳月を経て、再びベトナムの人々の記憶に残る、末永きに亘って誇れるプロジェクトの完成を目指したい。

 

工事概要

工事名称 ダイニン水力発電プロジェクト ダム本体工事
工事場所 ベトナム社会主義共和国 ラムドン省 ドゥクチョン地区
企業者 ベトナム電力公社
工期 2003.5.15〜2007.8.15
施工 ハザマ
工事概要 ダニムダム 盛立量 1,940,000m3
ダキヨンダム 盛立量 2,382,000m3
鞍部ダム4ヶ所他 総盛立量 3,697,000m3
常用洪水吐(設計洪水量 7,445m3/分)
非常用洪水吐(設計洪水量 3,176m3/分)
連結水路 掘削量 4,800,000m3

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