西大津BP長等トンネル工事

ハザマ現場レポート

栃木県医師会温泉研究所附属塩原病院新築工事(建築)

Interview&writing 藤田峰子

歴史ある湯治場に、温泉を利用した
総合リハビリテーション施設を建設

温泉地の病院

 渓谷と森、空気も心地よく感じられる。東北新幹線那須塩原駅からバスに揺られること、1時間、どこか懐かしい思いにさせる塩原温泉街の高台に、美しくアールを描く建物が見える。それが、今回竣工した栃木県医師会が運営する塩原病院だ。塩原温泉は平安時代に見出されたと言われる歴史ある温泉郷である。
 私たちが訪れた8月1日、施主への引渡しを終え、9月半ばに開院の日を迎える。工事は引き続き、2期工事に入り、既存病院の解体、看護師宿舎の建築などが行われる。一昨年8月から始まった工事の竣工は来年3月末だ。

建物全景

 

患者本位のリハビリ施設

リハビリのための温泉療法設備

 階層は6階だが、斜面に建設されているので、地上4階、地下2階という表示になっている。地下1、2階は、病院のバックヤードとも言うべき各種機械室、事務室、会議室、医療従事者のための更衣室や食堂などが置かれている。
 玄関ホールのある1階は診察室など、一般外来施設と、この病院の特徴の一つである、リハビリのための温泉療法設備がある(右写真)。一見、ホテルのプールかとも見まがうような、充実した設備である。また、救急車が入る通路を隔てて、「コミュニティー・カンファレンスホール」があり、さまざまな会議、講演に利用されることが期待されている。
 2階は理学、作業、言語などの療法室、個人のための訓練室となっており、理学療法室の大きなガラス張りの窓からは階下の温泉プールを見下ろすこともでき、つらいリハビリを少しでも明るくしようという心遣いが感じられる設計だ。
 3、4階は入院室。タイプはさまざまだが、縁側のような空間のある部屋や、バス・トイレ完備の個室など、長期入院にも対応する患者本位の設計だ。フロア内のあちこちにああるトイレは、患者の状態によって使い分けができるようになっている。また、ADL(activities daily living)コーナーというのが、数か所設置されており、ここでは退院後の日常生活に復帰するための訓練が行われる。

理学療法室
病室をつなぐ廊下
個室タイプの病室
縁側空間

 

中庭の様子 足湯も完備

 全体として、強く感じるのは患者本位の、高いホスピタリティだ。「患者がゆったりとした気持ちで訓練を受け、病院での生活を過ごし、かつ早期に日常に戻れるようにするにはどうしたらいいのか」という思想の具現化されたような病院である。うっかり「入院してみたい」などと思ってしまうほどだ。

 

ギリギリの敷地での工事

既設病院(右)に手が届きそうな建物

 この新設病院、実は稼働中の既存病院が、手の届きそうなところに建っている(右写真)。しかも急斜面だ。そしてアールを描いている。素人目にも施工の苦労はひと目で分かる。
 この現場を率いた池田達彦所長は80年入社。最近では、つくばエクスプレスの「研究学園駅」を手がけた。
「ご覧のように、敷地の空いている部分を利用しての建設ですから、8割がたが急斜面です。大きく3ブロックに分け、まず雛壇のように造成してから工事を開始しました」
 既存病院を稼働させながら、新病院を建設できるということで、空いている敷地の形に沿ったこのアールを描くデザインは、この設計プラン((株)伊藤喜三郎建築研究所)がプロポーザルで採用されたポイントの一つだったという。
「その上、1200m2もある凝灰岩の岩盤が出てきちゃいまして、2か月半ほど工事が遅れました」

巨大岩盤を化学反応で破砕

 その時は非常な苦労があったろうことは察せられるが、完成後に話を聞いているからだろう、所長は半ば苦笑。巨大岩盤は化学反応による破砕で撤去した。
「建設の敷地だけでいっぱいですから、工事用車両の駐車場の確保や重機の設置など、段取りを細かくつくり、うまく稼働させる必要がありました。冬は凍結、行楽シーズンは渋滞など、いろいろ悩まされましたね。しかも遠隔地ですから、すべてが『山岳単価』でした」
 そのほか、埋設配管も多く、既存病院のライフラインを傷つけることなく撤去しなければならない、吹き抜けが多いフロアのため、大量の仮設資材の搬入出が必要だった、「栃木バブル」と言われる時期だったため、職人の確保が大変だった、など、この病院建設は実に沢山の課題をクリアしながら、予定通りの引渡しを迎えた。

 

「温泉にもつからず、スキーもせず」

 東京建築第二支店の織田副支店長が「ここの人たちはね、温泉にもつからず、スキーにもいかず(那須はスキーのメッカ)、仕事やったんだよ。誉めて書いてね」と言ったが、こういろいろあっては、おちおち温泉につかってもいられなかったろう。池田所長は振り返って、「う〜ん、でも仕事としては、そんなに大変というほどではなかったですよ」と一言。温泉につからなかったのは、忙しかったせいではないらしい。皆さん、真面目、なのかもしれない・・・。
 この病院はリハビリ施設として素晴らしいだけでなく、地域の人や、観光に訪れる人のための拠点病院にもなるという。その意味でも建設の意義は大きい。
 2期工事が竣工したら、今度はどうぞ、ゆっくり温泉につかって疲れを癒してください。

工事概要

工事名称 栃木県医師会温泉研究所附属塩原病院新築工事(建築)
工事場所 栃木県那須塩原市塩原字塩の湯1333−1
企業者 栃木県医師会
工期 (株)伊藤喜三郎建築研究所 
施工 ハザマ・石川JV(うち当社80%)
工期 2005年8月17日〜2008年3月31日
工事諸元 RC造 建築面積3,965.59m2 延床面積 14,631.11m2

西大津BP長等トンネル工事|栃木県医師会温泉研究所附属塩原病院新築工事(建築)