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特殊エジェクターを用いたダム排砂システム
「砂嵐(すなあらし)」を開発
−ハザマ・沖縄海土−

2006年9月5日

 ハザマ(社長:新名順一)と(株)沖縄海土(社長:宮城茂信)は、京都大学大学院角哲也助教授の指導のもと、堆砂対策としてあらゆる貯水池への適用が可能なダム排砂システム「砂嵐(すなあらし)」を開発し、室内試験や現場実証によりその効果を確認しました。
 近年、ダムの堆砂問題はダムそれぞれの延命化という視点のみならず、ダム上下流域への総合的な土砂管理の視点からもその対策の必要性が高まっています。ダムによって遮断された土砂の流れを、適切な土砂管理によってその連続性を回復させる考え方です。
 現状の対策手法としては、従来からの掘削・浚渫に加えて,バイパストンネルや堤体ゲートを用いたダム排砂などの恒久的な対策がいくつかのダムで行われています。しかしながら、これらの手法は経済面や環境面の制約から全てのダムに適用可能とは言えず、より経済的で汎用性の高いダム排砂システムの開発が期待されています。このたび開発された、ダム排砂システム「砂嵐(すなあらし)」は、この期待に力強く答えるものです。
 本システムは、海砂採取等に実績のある特殊エジェクター*注1を用いてダム堆砂を移動させる点に特徴があります。この特殊エジェクターは、高圧水により管内に真空を発生させることにより堆砂を高濃度で吸引し圧送することができます。
 具体的には、貯水池や貯砂ダム内に堆積した土砂を特殊エジェクターによって吸引し、搬送管により貯水池外もしくは貯水池内の別の場所へ移動させます。近年、ダム直下への土砂の仮置きによる河川還元*注2が多くのダムで試行されていますが、この河川還元用の土砂を本システムにより貯水池内の適所から効率的に採取するとともに、可能な場合には、搬送管をダム下流まで延長したり、バイパストンネルに接続したりすることにより、下流河川へ直接排出することもできます。
  エジェクター内に混入させる空気の効果も相まって、管内の水流はまさに「激しく砂を吸い集めて吹きつける」状態であることから、本システムを「砂嵐(すなあらし)」と命名しました。本システムを従来の浚渫工法やバイパストンネルによる排砂などと組合せることにより、貯水池それぞれの現地条件に合わせた幅広い工法の選択が可能となりました。

【「砂嵐」の特長】

  1. 従来の浚渫工法(グラブ船やポンプ船を利用)に比べ、簡易な設備で効率的なダム堆砂の採取・圧送が可能である。また、管内で高圧水と空気で混合されるために、濁水の原因となる細粒分が洗浄され、陸上での簡易処理と組合せることにより河川還元に必要な砂分*注3を効率的に分離回収できる。
  2. ダム堆砂の湖内移送と堤体通過に適用することにより、陸上運搬に伴う騒音・振動・粉塵等の環境問題の解消が可能である。また、従来の浚渫工法では対応できない水深の浅い部分へも問題なく適用できる。
  3. 浚渫・湖岸仮置、排砂トンネルへの投入に適用することにより、バイパストンネルの延長が低減でき、コスト縮減が可能である。また、下流へ供給する砂の粒径の選択ができるとともに、平常時と出水時の作業分離により運用時の信頼性が向上する。

【効果確認と今後の展開】
 本システムについては、ハザマ技術研究所(茨城県つくば市)において大型水槽を用いた特殊エジェクターの基本性能試験*注4、沖縄県塩屋湾における海砂採取・圧送の現場実証*注5等を行い、その有効性を確認しました。
また、いくつかのダム貯水池における水位や土質等の条件をもとに、ダム排砂システムの実施設計*注6を行いました。
 今後は、実際のダム貯水池における実績を積み上げ、システムの高度化や適用範囲の拡大に取り組む予定です。また、日本国内だけでなく、台湾やインドネシアなどダム堆砂問題が見られる海外のダム貯水池への技術展開も予定しています。

 なお、本システムの一部については、「ダムの堆積物排出システム」として特許出願中です。

注1:特殊エジェクター
 エジェクターは噴流(ジェット)ポンプとも呼ばれ、ノズルから高圧水を噴出させ、そのエネルギーによって他の流体を吸引・圧送するものである。流体が通過する経路内に回転部をもたないシンプルな構造であるため、詰まりにくいことや管理が容易といった利点がある。特殊エジェクターは、意図的に自動制御された最適空気を外部から導入する点や絞りのない内装管を用いて真空を発生させる点などが通常のエジェクターと異なる。
 空気を混入させることは、管内の流動性を高めることとなり、吸引部の集砂能力に問題がなければ、含砂率90%の高濃度な堆砂でも圧送可能である。

《特殊エジェクターを用いる利点》

  1. キャビテーション*注7が起こりにくい。
  2. 管の磨耗に強い。
  3. 管の閉塞や詰まりに強い。
  4. 高濃度で吸引できる。
  5. 吸引部の濁度発生がない。

 その他に、構造がシンプルである、圧送中の洗浄効果がある、再起動が容易である等の副次効果がある。

図1 通常のエジェクター
図2 特殊エジェクター

注2:河川還元

 土砂移動の連続性確保を目的に、ダム貯水池に堆積した土砂をダム下流の河川に還元すること。近年、いくつかのダムでは、貯砂ダムや水質対策用の副ダム貯水池で捕捉した土砂を、ダム下流へ運搬・仮置きし、洪水時等に自然流出・流下させる土砂供給試験が行われている。長島ダム、三春ダム、秋葉ダム、二瀬ダム、下久保ダム、浦山ダム、蓮ダム、布目ダムなどが代表的事例であり、ダム堆砂の環境利用としての意義が高く、その持続可能性を追求する必要があるといわれる。

注3:河川還元に必要な砂分

 下流河道および砂浜海岸における土砂供給のニーズは、粒径0.075-2mm程度の細砂および粗砂が最も高いといわれ、この粒径の土砂を効率的にダムから排出することが河川還元の一つの目標とされる。

注4:基本性能試験

表1 使用した機材

表

写真1 試験状況
グラフ グラフ
図3 試験結果例

※排出距離L=96m(L/D=770)までの範囲では吸引量の低下はみられない。
※末端部を水面から上げていくと次第に吸引量が低下する。

注5:現場実証

表2 現場実証時の仕様

 

注6:ダム排砂システムの実施設計

1.吸引圧送+陸上処理システム(現場実証済み)

図4 吸引圧送部
図5 陸上処理部

2.湖内移送+堤体通過システム

図6 湖内移送+堤体通過システム(2段階排砂)

3.浚渫仮置+トンネル投入システム

図7 平面図
図8 断面図

注7:キャビテーション

 高速で流れる液体(水など)の中の圧力の低い部分が気化して気泡が生じる現象。気泡がつぶれるときに衝撃が発生し、騒音・振動を発生させ、ポンプやスクリューといった機器の効率を低下させる。また、壊食(エロージョン)などで機器を破壊することがある。

※2011年8月31日追記

  「砂嵐」の吸引と輸送の性能を大幅に向上させた新技術「礫送(れきぞう)」を開発しました。
  「礫送」のパンフレットはこちらから

 

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